堕とされた母 ⑨

「…………達也くんの、だから…」 唇を離して、消え入るような声で、そう言って。
恥ずかしさを誤魔化すように、大きく開いた口を、達也の巨大な肉冠へと被せていった。
「……ン……グ……」 懸命に唇を広げて、先端の部分を含んだ。
苦しげな息を鼻から突きながら、モゴモゴと口を蠢かせる。
とても、フェラチオとは呼べないような、稚拙な行為だが。
(まあ、しゃあないわな)
なにしろ、これまで口淫の経験など、まったくなかったってんだから、と。
いまは、なんの抵抗もなく汚れたペニスを含んで、夢中でしゃぶる佐知子の姿にその屈服の度合いを見て取ることで満足する。
牝奴隷としてのたしなみを仕込んでやるのも、ひとまず先のこととして。
「いいよ、佐知子さん」 陶然たる声をかけて、達也は佐知子の髪を撫でた。
「……フッ…ムウ……」
嬉しげに鼻を啼かせた佐知子が、いっそう口舌に熱をこめる。
グッと、咥えこみを深くして、口蓋に亀頭を擦りつけながら、舌をからみつかせる。
鼻から棒のような息をつきながら、ぎこちなく顔を前後に揺すって。
大量に紡がれる唾がジュプジュプと粘い音をたてて、達也の太さに広がった唇の端から顎先へとしたたる。
「ああ、いいよ、気持ちいい」 切ない快美の声で、さらに佐知子の熱狂を煽っておいて、
「……フフ、佐知子さん、そんなに僕のオチンチン、気にいった?好き?」
「……ンンッ…」 佐知子は、淫情に潤んだ眼で達也を見上げて。かすかにうなずいて。
堪えかねたように、達也の怒張を吐き出すと、
「好きっ、好きよっ、達也くんのオチンチン」 震える声で、そう叫んだ。
握りしめた指に力がこもる。
捧げもつようにした巨大な肉根を見つめる佐知子の瞳は、さらに蕩けて
「あぁ……すごい……」
畏怖と崇敬に慄く声を洩らして、自分の唾にまみれて、テラテラと輝く先端に、唇をふるいつかせた。
ブチュブチュと、熱烈な求愛の口吻を注ぎながら。
「……んん、すごい……好きぃ…」
抑制を失った佐知子の口からは、せくり上がる昂奮が、そのままの言葉となってダダ漏れに溢れ出す。
「熱くて…硬くて…逞しいから、怖いくらい逞しいから、好きっ」
唇で舌で、その獰猛なる牡肉の圧倒的な存在感を確かめれば、それによって与えられた魂消るような悦楽の記憶が、身体を震わせて、
「おっきいオチンチン好き、太いのが私の中いっぱいにして奥まで突いてくれるから好き」
熟れた肉体に刻みこまれた至極の快楽を追いかけて這いずりまわる舌が、凶悪に張り出したカリ首に届く。
「ここ、ここも好きっ、ゴリゴリって、中を擦って、キモチイイから、好き」
その鮮烈すぎる感覚を伝えるように、高い段差をレロレロと舌先でほじくった。
この攻撃には、さしもの達也も本気の快美のうめきをついて屹立をビクビクと脈動させる。
「う、あっ、佐知子さん…」
「いい? 達也くん、キモチいい?」
引き出した反応に歓喜して、佐知子は上目に達也の表情をうかがいながら、
舌の動きを強めた。
「あぁ、いいよ、佐知子さん」
「もっと、もっと気持ちよくなって」
こそげるように強く舌腹を擦りつけて、太い茎を扱きたてれば、
「……ああぁ、まだ、大きくなる、硬く……すごい、スゴイッ」
さらに、グッと漲る巨根の凄まじさに、震えおののいて。
しかし、双眸はネットリとした輝きを増す。
ゴクリ、と。あさましく喉を鳴らして。
「ああっ、達也くんっ」
たまらず、佐知子は、また禍々しく張りつめた鎌首へと、むしゃぶりついていく。
口腔を満たしつくす巨大な肉塊。夢中で首をふれば、擦られる粘膜から、ビリビリとした刺激が脳天まで突き抜ける。
亡夫にも裕樹にもしたことのない、淫らな愛戯。
以前の佐知子なら考えもしなかったような行為が、痺れるような愉悦を生む。
「うれしいな。それほど、気に入ってもらえて」
優しく、佐知子の髪を指で梳きながら、達也が言った。
「好きにしていいんだよ。このオチンチンは、佐知子さんのモノなんだから」
「……ムウウーーッ……」 佐知子の喉を啼かせたのは、歓喜の叫びだった。
夢ではないか、と思う。これほどの幸福を手に入れてしまったことが、いまだに信じられなくて。
達也のような若者と出逢って。愛されて。この年まで知らなかった女の悦びを教えられて。
身も心も満たされることの、この喜び……。
もっと、味わいたい。もっと、愛されたい。もっと、もっと。
その思いに衝き動かされて、佐知子は、さらに淫蕩な熱をこめて、愛しい肉体を舐め、しゃぶり、吸いたてた。上目づかいに達也を見る眼は、ドロンと濁って、どぎついほどの淫らな媚びを浮かべていた。歪みながら極太チ○ポを頬張った口元の卑猥さともあわせて、まるで人が変わったような…というのは今更か。
すでに、別人といえば別人の、いまの佐知子であるから。貞淑な寡婦、良き母、職務熱心なベテラン看護婦、そんな構えはすべて剥ぎ取られて、ただ貪欲に快楽を求める、牝としての姿を晒しているわけだから。
そんな佐知子のさまを見下ろす達也の口元は、笑みのかたちになってはいたが。
「飲んでみる?僕の」 訊いた声は、どこか冷やかだった。
母親ほども年上の女を、愚かな恋の夢に酔わせたままで。しかし、少しづつ、達也は、関係のありようを変えていく。真実のかたちへと。
主と奴隷、飼い主とペットという繋がりかたへと。
「……………」 わずかに、首ふりの動きを緩めた佐知子は、なにも答えなかった。
達也の言葉の意味はわかった。
嫌悪は感じなかった。無論、経験はないが、達也の欲望のあかしならば、飲めると思う。達也の吐き出したものを臓腑におさめるのだと思えば、ゾクゾクと甘い痺れさえ覚える。
でも……いまは、それよりも。
「それとも、他のところにかけてほしい?」
佐知子の迷いの意味など、たやすく読みきって、達也は重ねて尋ねた。
今度は、すぐにうなずきが返った。
「どこに、欲しい?」
「…………わかってるくせに…」 達也の肉根から口を離して、佐知子は小さく呟いた。
「ちゃんと聞きたいんだ」
「……もう…」
拗ねるように鼻を鳴らしてみせても。それが達也の流儀だとは、すでに佐知子も承知している。言葉にすることで淫情を高めるという遣り口に順応させられて、佐知子自身も、その刺激を受け入れはじめてもいたから。
「……私の…中に、入れて。中に、かけて…」
「………………」 達也は無言。軽く首をひねる素振りで、不合格だと告げた。
「……アァ…」 悲しげに嘆息して。それでも佐知子は羞恥に震える声で、やり直しを。
「……わ、私の……オマ○コ…に、達也くんの…オチンチンを、入れて。中に、子宮に、熱いのを、かけて」
教えこまれた卑猥な言葉を使ってのあさましい強請りの科白をやっとの思いで言いとげて、
「……恥ずかしい…」 佐知子は、泣くように顔を歪めた。
「フフ、オマ○コに入れて、なんて。いやらしいなあ、佐知子さんは」
「ひどい、達也くんが…」
「冗談だよ。さあ」 達也は佐知子の腕を掴んで、引き上げる。
佐知子はフラつく脚を踏みしめて、立ち上がった。
白衣の裾から覗く両肢は素足で、床についていた膝が微かに赤くなっている。
「ほら、こうして」 達也は佐知子のくびれ腰に手をあてて、身体の向きを変えさせた。
たたらを踏むようにして、半回転する佐知子。
「あぁ…また、こんな…」 達也に背を向けるかたちになって、不安げに振りかえる。
しかし、達也はお構いなしに、白衣の後ろを捲くり上げた。
「アッ、いやあ」 佐知子が羞恥の声を上げて、腰をよじる。
制服の下には下着もなかった。出勤前に、佐知子が、さんざん悩んだ末に選んで身につけた、パール・ピンクの瀟洒なショーツはストッキングと一緒にベッドの上に置かれている。
尻肌に直接空気を感じて、佐知子は咄嗟に手をまわしたが。
「ダメだよ」 そう釘をさされて、払われれば、それ以上は抗えなかった。
達也は持ち上げた裾を腰のベルトにたくしこんで、佐知子を尻からげのスタイルにすると、眼前に晒された豊臀をあらためて眺めやって。
「うーん、何度みても、ほれぼれするほど、いいお尻だね」 感に堪えたようにそう言った
「あぁ……恥ずかしい……見ないで、達也くん」
達也の意には逆らえずに、尻をさらした姿を保ちながら、弱い声で訴える佐知子。
「どうしてさ? こんなにキレイな、お尻なのに」
達也は手を伸ばして、艶々と光る白い臀肌を撫でた。
「こんなに、スベスベで。円くて、大きくて、さ」
達也の賞賛にも、佐知子は複雑な表情を浮かべて、
「……大きすぎて、不恰好でしょう?」 心細げな声で訊いた。
快楽に盲いて、すすんで破廉恥な行為を演じるようになっても。
達也の目に肉体を晒すことには、強い羞恥と抵抗を感じずにはいられない佐知子だった。
それは、自分の年齢への負い目からくる感情だった。
若い達也に、中年の肉体を見られることが恥ずかしく怖かったのだ。
特に、豊満な肢体に比べても大きすぎるヒップは、佐知子が密かなコンプレックスを抱いていた特徴だった。
だが、達也は、その豊かすぎる臀に、ことさら執着するようで。この時にも、
「そこが、いいんじゃない。大きくて、ムチムチしてて。最高だよ」
張りつめた双臀に這わせる手に、ネチっこさを加えながら、そう言った。
「あぁ、達也、くん…」
「ほら、もっと後ろに突き出して。よく見せてよ、佐知子さんのデカ尻」
「いや、ひどいわ」
そう言いながらも。佐知子は腰を屈めておずおずとした動きで裸の臀を後ろへと突き出す。
「ああ、いいよ、スッゴイ迫力」 達也の感嘆が、佐知子をいっそう恥じ入らせる。
実際、逞しいほどの量感を強調された巨臀は、熟女の貫禄ともいうべき圧巻の迫力に満ちている。
佐知子が気にするのも、むべなるかなという雄大さ。
しかし、達也の賛嘆も、まったく嘘にはならない、豊艶な肉の実りである。
「ホント、最高のお尻だよ。もっと自信もってよ、佐知子さん」
「ああ…達也くぅん…」 達也の真に迫った賛美に、佐知子は甘ったるい声を洩らして。
弄られる白い桃尻が、モジモジと蠢く。
「さあ、もう少し脚を開いて」
タップリとした熟れ肉を両手に掴みしめて、達也が指示する。
「あ、いや、恥ずかしい」
後ろから、秘肉を暴かれるのだと知って、佐知子が弱い拒絶を示して、双臀の合わせ目がキュッと緊張した。
「そうしないと、オチンチン入れられないじゃない。いらないの?僕のオチンチン」
「…………」 それは、佐知子には殺し文句だった。
哀しげな息をひとつついて、佐知子は、また少し開脚を大きくする。
「うん、それでいいよ」 聞き分けのよいペットに言うように褒めてやって。
達也は、佐知子の分厚い臀肉を広げた。
「うわ、スゴイな」
「……ああぁ……」 達也が大袈裟に驚き、佐知子が泣くような声を上げる。
「スゴイことになってるよ、佐知子さんのオマ○コ」
「いやぁ……言わないで、見ないで、達也くん」
言われるまでもなく、自分の“そこ”の惨憺たるありさまは察しがつく。
激しい交わりの末に、達也の多量な精を射こまれたのは、ほんの小一時間前。
その後、なんの始末もしていないのだ。
長い深い恍惚から、ようやく現世に戻ったあとも、ベッドの上で達也と抱き合ったまま、飽きることなくキスと愛の言葉を交わしあって。
淫らな熱を冷ますことのないまま、達也の足元に跪いて、愛しいペニスを口舌で味わうことに、うつつをぬかしていたのだった。
「すっごく、いやらしい。ほら、佐知子さんのオマ○コから、僕のが溢れてきてる」
わざわざ説明して、また佐知子を恥辱に泣かせておいて。
達也は、それを確かめるように、指を挿しいれた。
「ああ、いやっ、ヒッ、アアッ」
「うわあ、ドロドロだよ、佐知子さんのオマ○コ」
たちまち甲走った叫びを断続させる佐知子に、呆れたように告げながら、達也は深く挿しこんだ二指で、ドロドロの蜜壷を攪拌する。
「あっ、ダ、やぁっ、アヒッ」
「出てくる出てくる。聞こえる?佐知子さん。ブジュブジュって。佐知子さんのオマ○コの音」
「いやぁっ」
激しく首を左右に打ちふりながら、しかし佐知子の下肢にはグッと力みがこもって、秘肉を攻める達也の指に迎合する動きで、腰がくねり臀が踊る。
「でも、僕のだけじゃないよね、こんなにグチョグチョになってるのは。溢れてくる精液、だいぶ薄くなってるし」
嘲笑するように、達也は言った。
「ほら、お湯みたいに熱い汁が噴き出してくる。搾りたてのオマ○コ汁。臭いもスゴイや。いやらしい臭い」
「アアッ、いやいやっ」
「いやじゃないんでしょ? いやらしいことを言われるたび、キュッキュってしめつけて、また、ジュースを溢れさせてくるよ、佐知子さんのマ○コ」
「ヒッ、アアッ、いやあっ、アッ」
「僕のチンチン、舐めてる間も、ずっと濡らしてたんだね? そうでしょ?」
「ああぁ…」 消え入りたげな声を洩らした佐知子だったが。
達也から隠すように前を向いた顔が、かすかに縦にふられた。
「やっぱり、そうなんだ。ちょっと前に、ヤったばかりなのに。欲張りだな、佐知子さんのオマ○コは」
「いや、ひどい、そんな」
「佐知子さんが、こんなにいやらしい女だとは、思わなかったな」
「あぁ……ひどいわ」 細首を背後にねじって、佐知子は涙を浮かべた眼で、達也を見やる。
「達也くんが……私を、こんなにしたのに」
「ああ、そうだね」 甘い恨みの言葉に、余裕の笑みをかえす達也。
「で、佐知子さんは後悔してるの? 僕に、こんなにエッチな体にされたこと」
「……それ…は…」
「僕は、いやらしい佐知子さんも好きだよ。すっごく、そそられるからね」
「……あぁ……達也くん…」
「もっと、いやらしい姿を見せてよ。ほら」
「ヒィッ、あ、やっ、アアア」 佐知子を抉った達也の指が俄然激しい抜き差しを開始する。
「スゴイよ、佐知子さんのオマ○コ。熱くなって、ドロドロになってて」
「あ、いやっ、達也くん、私、もうっ」
ガクガクと震える両腿を掴みしめて、崩れそうになる体を支えながら。
のたうちくねって達也の攻めを迎える佐知子の豊臀に、小刻みな痙攣が走る。
「もう、イっちゃいそうなの? このまま、イク?」
「いや、いやあっ」
「じゃあ、どうする? どうしたいの?」
「オチンチン、オチンチンで、イキたいのっ」
瀬戸際まで追いつめられた官能が、佐知子に躊躇なく本音を叫ばせた。
「ああ、そうだったねえ」 ピタッと、佐知子を追い上げていた達也の手が止まる。
ズルリと引き抜いた。わななく女陰から、コッテリとした汁が飛び散る。
「アッ……あぁ……はあ……」
「佐知子さんは、この欲張りなオマ○コに、僕のチ○ポが欲しいんだったよね」
指をよごしたヨガリ汁を、佐知子の震える臀の肌に擦りつけながら、達也が訊いた。
「……い、入れて……」
ギリギリの昂ぶりと、渇望に慄く声で求めて。佐知子はグッと腰を気張って、達也へと巨臀を差し出した。
「いいよ。あんまり佐知子さんがいやらしいから、僕もたまらなくなっちゃった。でも、わかってるでしょ? 入れるのは、佐知子さんだよ」
「あぁ……こ、このまま、なの?」 佐知子が恥ずかしげに訊いた。
これまでの交わりも、すべて佐知子が達也にまたがるスタイルで行っていた。
達也に足の怪我をタテにとられては、佐知子も受け容れるしかなく。
騎乗位や、このような変則の座位で、自分から達也に繋がっていく呼吸も、その後の腰のふりかたも、少しずつ慣らされてきていたが。
それでも、後ろからというのは、抵抗を感じてしまう。
達也の顔が見えないことが不安だし、感じる恥辱も強かった。
しかし、達也は
「そうだよ」
“せめて、向きあうかたちで”との佐知子の願いは一顧だにせず、
「このデカイお尻が、僕のを呑みこんで、クネクネ踊るところが見たいんだ」
ピタピタと佐知子の尻タブを叩きながら、愉しそうに言う。
そうなれば、佐知子は従うしかなかった。
グズグズと躊躇を見せて、“じゃあ、やめる?”と達也が言い出すことが、なによりも怖かったので。
さ、と達也が促して。
佐知子が、弁解がましい溜息をひとつ、ついて。
ゆっくりと、巨きな臀が沈んでいく。巨大な屹立へと。
達也の両膝に手をついて、ユルユルと豊かな腰を落としていく佐知子からは迷いもためらいも消えて。真剣な表情で、下をうかがいながら。
「……アッ…」 ギクッと、白い臀が硬直する。秘裂に、達也の熱い矛先を感知して。
「……フ……うっ……」
ヌルヌルと、硬い肉で濡れた花弁を擦られる感触に、鼻を鳴らしながら、佐知子は臀を微妙に前後させて、角度を調節する。
そうして、求めるモノを求める場所に一致させたことを確認すると。
「……ハァ…」 大きく腹をあえがせて、深い呼吸をついて。
グッと唇を引き結んで、臀を落とした。
「…クッ……ん…む…」
ズブリと潜りこんだ巨大な感覚に、佐知子の眉間には深々と皺が刻まれる。
「…フ…グ……クッ…」
肉を軋ませる強烈な拡張感に苦しげなうめきをつきながら、佐知子は動きを止めることなく、臀を沈みこませていった。
ズブズブと、巨きな臀が巨大な肉柱を呑みこんでいく。
佐知子の苦悶の声には、そぐわないような滑らかさ。
佐知子の熟れた肉が、達也のケタはずれのスケールにも、だいぶ馴染まされてしまったことを告げている。
慎重に。あるいは、ジックリと味わうように、結合は進められて。
「……フ、ム……うっ、ううん……」
佐知子の臀と達也の下腹が密着して、肉の繋がりは完全なものとなった。
「お、お……んああぁっ」
長大な肉棒を根元まで咥えこんで、硬い先端に子宮を押し上げられた佐知子が、重いうめきをついて、喉を反らした。
「奥まで、全部入ったね」
ここまで、すべて佐知子に任せて見守っていた達也が、佐知子の背に胸を合わせ、胴に腕をまわして、囁きかける。
ウン、ウン、と佐知子はうつつに数度うなずいて、
「は、入って…る、達也くんの、奥まで、私の中、いっぱいに」
苦しげな息の下から、口早に訴えた。呼吸は重く苦しげでも、眉根はうっとりと広がって、総身には、はや絶頂間際のような震えが走っている。
「ん、あっ、深…いっ、深く、までっ」
「苦しい? 佐知子さん」
「苦し、けど、いいのっ、うれしいのよ」
佐知子の手が、自分の臍下に伸びて。達也のかたちに膨らんでいるように感じられる部分を愛おしげに撫でまわした。
「達也くんので、いっぱいにされて、嬉しいの」
汗を滲ませた面には、深い恍惚の表情が広がっていた。
「じゃあ、ずっとこのままでいようか? 奥まで繋がったままで、動かずに」
「あぁん、いやっ」 達也の意地の悪い問いかけに、首を左右に打ちふって、
「動く、動くのっ」
幼いような口調でそう言いながら両手で達也の膝を掴みなおして、ググッと腰をもたげた。
「ひっアアッ、擦れ、る、ンアアッ」 自らの動きが齎した、鮮烈な刺激に高い声を張って。
そのまま、佐知子の大きな白い臀が、ユッサユッサと上下しはじめる。
「アッ、いっ、イイッ、スゴ、アアアッ」
咥えこんだ逞しい牡肉を貪る動きは、初っ端から激しく。
達也の腹へと、重量級の熟れ尻をズシンズシンとブチかましては、大きな振幅で、長く太い肉根を味わう。
「アアッ、いいっ、キモチいいっ、いいのっ」
現れ消える達也の剛直は、コッテリとした白いヨガリ汁にまみれて。
とめどなく掻き出される淫蜜で、達也の股間はベタベタに汚れていく。
「激しいねえ、佐知子さん」
今日、すでに一度、欲望を吐き出している達也は、佐知子の狂乱ぶりにも、凄まじい女肉の収縮にも巻きこまれることなく跳ね踊る白い臀を、冷然と見下ろして。
「こんなに卑猥に、デカ尻を振っちゃってさ」
パシンと。高い音をたてて、達也の平手が佐知子の臀丘に炸裂する。
「ヒイィッ、いやぁ」
「いい音がするなあ。この、デカくて、いやらしいオケツは」
もう一発。今度は逆の尻タブに。
「アイッ、やめてっ」
うっすらと赤い痕が残るほどの打撃。フザケて、という域を少しばかりはみ出した嗜虐の行為。
「いやよ、達也くん」
「とか言って。ぶたれた瞬間に、キュッて、チ○ポを締めつけたじゃない。佐知子さんのオマ○コ」
「ああっ、いやっ、嘘よ」
「じゃあ、もう一度」 今度は、大きく振り上げた手を、思いきり叩きつけた。
「アアアアッ」
「おお、締めるしめる」
クッキリと手形をつけた白い臀丘が、キューッとしこるのに合わせて、佐知子の肉孔は食いちぎるような締めつけを達也に与えた。
「ね? お尻をぶたれて感じちゃうんだ、佐知子さんは」
「……ああぁ…」
否定するように頭をふりながらも、佐知子の快楽を貪る動きはますます激しさを増して。苦痛さえ刺激に変えて、いっそう官能を昂ぶらせているのは、明らかだった。
「チ○ポ入れられてさえいれば、なにをされても、キモチよくなっちゃうんだね。佐知子さんて」
「ああっ、そんな、だって」
「だって、キモチいいから、って? ホント、いやしいオマ○コだな」
これまでになく、露骨で執拗な達也の言葉なぶり。
「……あぁ…」
ひどい、と嘆いても、一瞬も淫らな腰の動きを止めらない己が肉のあさましさに、すすり泣きに喉を震わせた佐知子は。
腰を大きく捻って、背後の達也に向くと、
「達也くん、きらいにならないでね? 淫らな私のこと、きらいにならないでっ」
きつく達也の腕を掴んで、涙声で訴えた。
「達也くんにきらわれてしまったら、私、わたし…」
激情に声は掠れて、眼尻からは涙の粒がこぼれて。
見栄も恥もなく、年下の男にすがる佐知子の姿には“どうせ、この関係も達也の退院までのこと、達也のためにもそのほうがいい”などと悟りすましたことを口にしていた時の、分別らしさは影も形もない。
「そんなことを、心配してるの?」 達也は笑って。佐知子の涙を指で拭いとって、
「そんなはず、ないじゃない。馬鹿だな、佐知子さんは」
「だって、達也くんが…」
「言ったでしょ? 僕は、いやらしい佐知子さんも大好きだって」
そう言って。佐知子の胸に手を伸ばして、ギュッと握った。
「アッ、アアッ」
「こんなふうにさ、すぐに感じてくれるのは、僕だって嬉しいもの」
ベッドを大きく弾ませて、動きの緩んだ佐知子の臀を突き上げた。
「あひっ、んっ、アッ、達也くん、アアッ」
「でも、あんまり可愛いから…」
即座に感応して、淫猥な運動を再開する佐知子の乳房を握りつぶすように、達也は強い力を加えた。
「あいっ、痛っ」
「つい、苛めたくなっちゃう」
「ク、アッ、達也、くん」
「これも、佐知子さんを好きだからだけどね。いろんな声が聞きたくて」
乳房への加虐は続けたまま、佐知子の耳朶に歪んだ情熱を囁きかける。
「佐知子さんは、イヤかな? こんな僕のやりかたは」
「す、好きにしてっ」 佐知子が叫ぶ。乳房の苦痛と、肉奥の快楽に身悶えながら。
「いいの、達也くんのしたいようにしてっ」
愛してくれるなら、この悦楽を与えてくれるなら、どんなかたちでもいいから、と。
「好きなようにして、私のこと、どうにでもしてぇっ」
征服され、蹂躙されることの歓喜の中で、佐知子は咆哮した。
着実に深まっている屈服の度合いに達也は満足して。
褒美のように、腰を突き上げ、耳に囁いてやる。
「好きだよ、佐知子さん。愛してる」
「あ……ぁああああああっ」 ブルブルと、瘧のような震えが佐知子の全身に走って、
「アアア、達也くんっ、私、もうっ」
切迫した嬌声とともに、ふりたくる臀の蠢きが、ひときわ苛烈になる。
「もう、イキそうなの、佐知子さん?」
「そ、アッ、イク、イっちゃ、イクッ」
「オマ○コ、イっちゃう? 淫乱オマ○コ、キモチよくて、イっちゃうの?」
「うああ、イク、オマ、オマ○コ、イクッ、や、スゴ、アア、イクイクイクッ…」
口移しのまま、卑猥な言葉を吐き散らしながら。絶息を惜しむように
いまわのきわで数瞬を持ち堪えて。
「アアッ、イッ………ク、イクゥッ」
ついに怪鳥のような叫びを迸らせて、断末魔の痙攣に総身を戦慄かせた。
快楽を極めた肉壷が、凄まじいほどに収縮する。
しかし、達也は悠然とそれに耐えて。
いまだ凄絶な絶頂の余韻に震える佐知子の腰を抱えると、深く重い突き上げを見舞った。
「ヒイイイッ」
高みから降りる暇もなく、最奥を抉られた佐知子が裏返った悲鳴を張り上げた。
達也はなおも連続して腰を弾ませて、佐知子を半狂乱に泣き喚かせる。
「アヒッ、ダ、ダメェ、達也、くん、そん、な、すぐ、アアアッ」
「僕は、まだまだだからね。もっともっとキモチよくなっていいんだよ」
「いやあぁっ、おかしく、おかしくなっちゃう、それ、ダメっ、ヒイイッ」
「いいよ、おかしくなっちゃってよ。ほら、佐知子さんの欲張りオマ○コは、こんなに喜んでるじゃないか」
「んああっ、いっ、死ぬ、死んじゃう、アッ、イイッ」
「続けてイってごらんよ。オマ○コ、イっちゃいな」
「アアッ、イク、ま、また、イっちゃう、オ、オマ○コイク、オマ○コ、イっちゃう」
錯乱の中、ほとんど連続した絶頂に佐知子は追い上げられて。
しかし、達也は遂情の気配すら見せずに。
「ああ……ま、まだ…もうダメ……ゆるして、達也くん」
気息奄々たる哀願が、やがて号泣に変わって。
そして、赦しを乞う泣き喚きも、じきに物狂ったような獣声に変化して。
白昼の病室での痴宴は、いつ果てるともなく続いていく……。
-17-
「……どうしたの?」
と、訊いたのは、佐知子である。
いつものように、母子ふたり、差し向かいでの夕食の席。
「え? なに、ママ?」
「なにって……裕樹、なんだか黙りこくってるから」
「あ、うん……ちょっとね」
佐知子の指摘通り、裕樹の口数は極端に少なく、そうであれば、ふたりきりの食卓は、妙にシンとした雰囲気になっていた。
「ちょっと……考えごと」
曖昧に、裕樹は答えた。なにを考えていたかは、言えない。
この数日、裕樹の胸にわだかまって、鬱々たる思いにさせているのは、例の、高本からの“相談ごと”だった。
実際には、相談などとは名ばかりで、単に高本の悪友にまつわるゴシップを聞かされただけだったが。
しかし、所詮は他人事にすぎないその醜聞に、裕樹は自分でも不可解なほどに拘泥してしまっていた。折あるごとに、その見知らぬ母子……自分たちと同年代で境遇もよく似た母子について、思いを巡らせてしまうのだった。
まあ、まったく無関係な立場である裕樹が考えるといったって、そのフシダラな母親への嫌悪と、同い年だという少年への同情を新たにするだけのことで。なんの意味もなく、ただ憂鬱な気分になるだけだとは、わかっているのだけれど。
こうして母と向き合っている時などには、ついつい思い浮かべてしまうのである。
しかし、知らずのうちに、また考えこんでいた問題は、母に打ち明けるには、どうにも微妙すぎることだったし。他所のゴシップを食卓の話題に乗せることもイヤだったから、裕樹は、そんな言い方で誤魔化した。
それは、世間並みの反抗期などとは無縁に、どんなことでも母に話したがり聞かせたがる裕樹にしては、珍しい態度であったのだが。
「そう……」 しかし、佐知子はあっさりと納得して。静かな食事を再開する。
「……………」
それで収まったはずなのに。どうにも裕樹はモヤモヤとしたものを感じてしまう。
いつもの、本来の母なら、こんなあやふやな説明で、終わりにはさせないのではなかったろうか、と思う。裕樹の歯切れの悪さを敏感に察知して、もう少し、踏みこんでくるところではないだろうか。
裕樹は緩慢に箸を動かしながら、対面の母の表情をうかがった。
母もまた、黙然と食事を続けている。眼線は裕樹と重ならず、静かな顔色からも感情は読み取れない。
裕樹は、苛立つものを感じる。
最近……母から自分へと向けられる関心が、薄れているような。
いや、それは言い過ぎだろうし、被害妄想になってしまうだろうが。
だが、母と自分が、どうも上手く繋がっていないことは、確かな気がした。
「……………」 裕樹は、母の身体へと視線を移した。
いまの佐知子は、ノー・スリーブの部屋着姿で白く柔らかそうな二の腕を剥き出している。
肌がすべやかで、全体にサッパリとした印象を与えるのは、すでにシャワーを使っているからだ。
ここ数日、帰宅後、すぐに汗を流すのを習慣としていた。
裕樹の眼は、窮屈そうに服を押し上げた豊満な胸へと引き寄せられる。
大好きな、ママのオッパイ。しばらく、触れていない。
数日前、裕樹が帰宅すると、母が自室で寝込んでいた日。密かに期待していた蜜事を諦めざるを得なかった。それ以来、母の寝室を訪ねる機会を掴めずにいた。
“少し、疲れが出ただけ”と言った通りに、翌朝には元気な姿に戻った母だったが。
それでは、と早速ネダることには、裕樹は抵抗を感じてしまった。
もう少し時間を置こうと。精一杯の自制を働かせて母の体調への気遣いを示したのだった。
そういうわけで、常の倍くらいの間隔が空いてしまっている。
妙にママとの呼吸が合わないような気がするのも、そのせいかも知れないと裕樹は考える。
真面目にそう思うのである。この母子は、もう半年以上も、そのようにして、互いの結びつきを確認することを繰り返してきたわけだから。
母の肢体を見つめる裕樹の眼に、熱がこもる。裕樹とて、幼いなりに欲望を知る男であり、稚拙で他愛もないものとはいえ、享楽の時間を経験しているわけであるから。
長く、それから遠ざかれば、溜まった欲求は渇望へと育って、身体を熱くもするのだ。
(それに……最近のママ、すごく綺麗なんだよな)
切ないような眼で、佐知子の臈たけた美貌を眺める。
化粧を落とした顔。しかし、素っぴんの肌は、しっとりと潤い、艶々と輝いて。
綺麗、と裕樹は形容した。それは、まったく間違いではないが。
もっと端的には、すごく色っぽくなった、というべきだろう。
裕樹の幼い感覚でさえ感じとれるほどの濃厚なフェロモンを発散する最近の佐知子である。
しかし、そんな母の変化には気づきながら、“何故?”という疑問を裕樹は持たない。
絶対的な信頼、母は自分だけのものだという確信のゆえに、“きっかけ”を勘ぐるような思考を抱かない。
(これで、佐知子の毎日の帰宅が遅くなる、というような状況でもあれば、いくら裕樹でも、疑惑を生じさせたかもしれないが)
ただ裕樹は、母の纏う凄艶な色香に魅入られて。
熱い視線を注ぎ続けた。エッチな期待をこめた顔になっているな、と自覚しながら、それでもいいと思った。ママが、それに気づいてくれて、そして優しく誘ってくれれば……。
しかし。
箸をおいて。ようやく裕樹に眼を合わせた佐知子の口から出たのは、
「裕樹、もういいの?」 という、なんの色気もない科白だった。
「あ、う、うん。ごちそうさま…」
「はい。お粗末さま」 裕樹からの無言のアピールには、まったく気づくようすもなく。
手早く食器を重ねて、佐知子は立ち上がる。
流しに立って、ふたり分の食器を洗いながら、
「……ねえ。今日も、ママ、お風呂さきしていいかな?」
裕樹に背を向けたまま、佐知子が訊いた。
「えっ? あ……」
母の後ろ姿、スカートの裾から覗いたふくらはぎの肉づきに眼を奪われながら、掛ける言葉を探していた裕樹は、咄嗟には答えられない。
佐知子が、裕樹より先に入浴する。やはり、ここ数日の、小さな変更点。
しかし、たかが風呂の順番程度のことを、すぐには裕樹は承諾できない。
「いい?」
「あ、う、うん…」
それでも、顔を振り向けた母に重ねて求められれば、力なくうなずくしかなかった。
「ありがと」 ニコリと笑って。あっという間に片付けを終えた佐知子は、そのまま浴室へ。
「…………」ひっそりと、落胆の息をついた裕樹は、見るともなく時計を見やった。
何故、こんなにガックリきているかといえば、これで、どうやら今夜も母との営みはないことになりそうだからだ。
裕樹より先に風呂を使うようになってから、佐知子の入浴時間は、やたらに長くなった。
たっぷり、一時間以上は浴室にこもって。
そして、入れ替わりに風呂に入った裕樹が出てくる頃には、すでに寝室に引き篭もっているのだった。
それが、この数日の越野家の夜のパターンになっていて。
裕樹が、母のもとを訪れるのに二の足を踏んでいたのは、そんな些細なようで意外と大きな変更のせいでもあった。
「……ママ、気づいてくれなかったのか…」
愚痴が洩れた。かなり露骨に、欲求をあらわしていたつもりなのだが。
だいたい、こんなに間があいてることについて、母のほうでは、どう思っているのだろう?
以前は……そろそろ、今日あたりいいかな? という気持ちになれば、母もすぐに察してくれて、さりげなくサインを返してくれた。だから、“ママ、いいかな?”と、母の寝室で裕樹が尋ねたのは、ほとんどの場合、確認にすぎなかったのだった。
そんな、阿吽の呼吸ともいうべき疎通がなされていることにも、幸福を感じていたのに…。
……やはり、一時間以上が過ぎて。ようやく佐知子が風呂から出た。
ローブの胸元から、艶かしいピンク色に染まった肌を覗かせて、洗い髪の香りを撒き散らしながら現れた姿を、恨めしいような眼で見ながら、入れ違いに、裕樹は脱衣所に入った。
狭い空間は、母の甘い体臭に満たされていて、裕樹は股間に血が集まるのを感じた。
「……もうっ」 苛立たしげに、服を脱ぎ捨てていく。
ふと、洗面台に目を止めた。
「また、増えてる」
並べられた化粧瓶。本当の化粧品は、母の寝室の鏡台にあるはずだから、これらは、スキン・ケア用品ということになるのだろうか。裕樹には区別がつかないが。
とにかく、以前は一、二本だけだった瓶が、急に増えている。
母の、長くなった入浴時間は、このせいでもあるのだろう。
何故、母が急に、肌の手入れにやっきになりだしたのか、裕樹にはわからないが。
「ママは、そんなことしなくても、綺麗なのに…」
自分の眼には、昔から、ずっと変わらずにいるように見える母なのに、と。
八つ当たり的に、ブツブツ言いながら、下着を脱ぎおろした。
周囲の甘い香に反応して、小さなペニスは、ピンコ勃ちになっている。
「……でも」
これからなんだよなあ、と。恐るおそるといったていで、浴室のガラス戸を開けた。
「…う」 踏み入った浴室の中は、当然ながら、はるかに濃密な臭気が篭っている。
成熟した女体のフェロモンに包まれて、クラクラと眩暈がした。
それは、確かに母の匂いだ。大好きな香り、なによりも心安らぐ…というのは、抱かれて眠るときに嗅いでいたような、ほのかな臭いなれば、いえることで。
こうまで濃厚で生々しいと、ひたすら裕樹の煩悩を擦りたてるだけだった。
ドキドキと鼓動が早くなり、勃起は痛いほどにギンギンになってしまう。
裕樹は、息をつめて、大急ぎで体を洗いはじめた。
……短い入浴時間のわりには、ボーッとノボせた顔で、裕樹は風呂から出た。
濡れた髪のまま、キッチンに向かって。冷たい牛乳を飲んだ。
パジャマの股間が、ピョッコリと突き出している。
あんな状況女のエキスが充満したような密室の中にあって昂ぶりが鎮まるはずもなかった。
それでも。母の臭いの中で、自分の手で欲望を解消してしまおうか、という誘惑を退けて、裕樹は浴室から出てきた。
どうにも、諦められなかったからだ。
「…………」 裕樹はキッチンを出ると、暗い廊下を、奥へ、母の部屋へと向かった。
迷いはなかったが、つい忍ぶような足取りになってしまう。
「……ママ?」 静かに、母の寝室の前に立って。軽くドアを叩いて、呼んでみた。
返事はない。
しばらく待ってから。裕樹はそっとドアを開けた。
部屋の中は暗かった。
裕樹の来訪を予期して、待ち受けている時の適度な暗さではなくて。
「……………」 裕樹は、落胆の息をついた。
灯りを最小限に落とした部屋の中、ベッドの上で、母はすでに眠っていた。
枕に横顔を埋める姿勢で、軽く曲げた両腕を、しどけなく投げ出して。
薄い上掛け越しに、悩ましい身体の曲線を浮かび上がらせて。
「……ママ」 その寝姿の艶かしさに吸い寄せられるように、一歩踏みこんで。
もう一度、少し声を高めて、裕樹は呼んだ。
しかし、佐知子は気づかない。
風呂を出てから、それほどの時間が経ってもいないのに。
すでに佐知子は、熟睡に入ってしまっている。よく聞けば、かすかな鼾の音さえさせて、グッスリと眠りこけている。
また一度、嘆息して。それで裕樹は諦めた。
母に迎え入れてもらわなければ、裕樹には、どうしようもない。
ここで、眠る母に襲いかかって無理やり欲望を果たす、というようなことは裕樹には出来ない。考えもしない。
(……よっぽど、疲れてるんだな、ママ)
なにかの事情で、激務が続いているのだろうと慮って、自分を納得させた。
だから、先に入浴を済ませて、早く休むようにしているのだろう、と。
労わりと感謝、そして、わずかな未練に引かれて、裕樹は、ベッドの傍まで忍びよった。
「あまり、無理はしないでね。ママ」 眠る母に、そう囁いて。頬にキスした。
「……ん…」
佐知子が、微かな声を洩らす。しかし、裕樹の一瞬の期待に反して、
目覚めることはなく。ただ、口元に、うっすらと笑みを浮かべた。
その幸福そうな寝顔を見たことで満足することにして。裕樹はベッドから離れた。
「……おやすみ、ママ」
満たされなかった欲求の代わりに、ちょっと背伸びした行動で自分を慰めて。
裕樹は静かにドアを閉ざした。
……ベッドの上、幸せな夢にたゆたう佐知子が、小さな寝言を呟いたのは、その直後だったので。
「……つや…く…ん…」 愛しげに、誰かの名を呼ぶその声を。
裕樹は聞かなかった。

ナース・ルーム。朝のミーティングの風景。
部下の看護婦たちに指示を与える、佐知子の声が響いている。
それは、毎朝繰り返されてきた、定例の光景。
しかし、場に漂う空気が、以前のそれとは大きく変容していた。
若いナースたちは、揃って、佐知子を注視し、彼女の言葉を静聴しているけれど。
静かさが、研ぎ澄まされたものではなくなっている。
佐知子を見つめる彼女たちの眼に浮かんでいるのは、以前のような信頼と尊敬、憧憬といった心情ではなくて。
猜疑、不信、失望、軽蔑、冷笑……。
個人によって温度差はあっても、いずれ負の感情ばかりだった。
無言のざわめき。澱んだ、重苦しい雰囲気。
そんな中で、佐知子は、淡々と現場統括者としての職務を果たしていく。
平静な…というよりは、平坦な表情。
手にしたカルテから、ほとんど眼線を上げようとはせずに。
さすがに、そのチェックや指示は的確で適切なものだったが。どこか事務的な進行はこれまた、以前のありようとは変わってしまっていた。
「……以上です。他に、なにかありますか?」
かける時間も随分と短縮されて。会合の最後に、佐知子はやっと眼を上げて、居並ぶナースたちを見回した。かたちだけの確認のはずだったのだが。
はい、とひとりが手を上げた。
「…沢木さん?」
「あの、主任に、お聞きしたいんですけど」
沢木と呼ばれた若いナースは、口調は慇懃に、しかし、挑発的に眼を輝かせて、言った。
ミーティング中から、最も剣呑な眼を越野主任に向けていたのが、この娘であり。
皆も、それは知っていたから、ハッと緊張の気配がたつ。
「私たちって、勤務の時は、あまり派手な下着は着けちゃいけないんですよね?私、それで以前に、主任にお叱りを受けたことありますし」
沢木の言葉に、さらに場の緊迫感は強まった。
皆の視線は、忙しく沢井と佐知子とを行き来する。露骨に、佐知子の身体へと向けられる視線も多かった。
「白衣の上から透けてしまうような、派手な色のものは着けないようにって。そういう、御指導でしたよね?」
「……そう…ね」 答えた佐知子の声は、低いが落ち着いたものだった。
表情も冷静で、なんら感情をうかがわせなかった。
ただ、カルテを挟んだクリップ・ボードを持つ指には、ギュッと力がこめられて。
「それが…どうかしたかしら?」
わずかに声をはげまして、眼に力をこめて、佐知子は聞き返した。
沢木は、もっと露骨に睨みかえした。
周囲が息をのむ中での、数瞬の睨み合い。それもまた、以前なら考えられなかった
光景だろう。“優しいが、怒ると怖い”とは、越野主任に対する
ナースたちの共通の認識であったから。
「……いえ」
やがて、沢木看護婦が、睨むことを止めて、そう言ったのも、佐知子の眼力に屈したからではなく、隣から腕を引く同輩の掣肘を受け入れただけのことだった。
その証左に、彼女の面に再び浮かんだのは、冷笑であり、
「最近、それを忘れているナースがいるようでしたので。ごく一部にですが。改めて、風紀の徹底を心がけるべきではないかと思いまして」
皮肉たっぷりに、そう言って、まとめたのだった。
「……病室内での行い、とかね」
ボソリ、と。一角から、沢井に同調する呟きが聞こえた。
そんな彼女らを非難の眼で見るナースもいる。ただ困惑してキョロキョロとする者もいる。
しかし、沢木らが、なにを、誰のことを言っているのかは、その場の全員が理解していた。
それを、妄言だと、ゆえなき中傷だと考える者はいなかった。
ナースたちの間でそれはすでに“噂”の域を超えて。暗黙の了解事となっていたのだった。
変貌した越野主任の、“ご乱行”は。
……最初は、他愛もない冗談口であったのだ。
『それにしても、主任、熱心よねえ?』
『ホント。ずーっと、付きっきりだもの』
名家の御曹司、それも、かなりの美形の少年となれば、若いナースたちの関心を引かずにはおかないのに。特別病室の客である宇崎達也とは、ほとんどの者が、接点を持てない。
それが、達也の担当として、唯ひとり、そば近く接する佐知子へと向かった。
無論、誰も、そんなことを本気で疑ってはいなかった。
『ダメですよ、主任。いくらカッコいいコだからって、あんまり親密になっちゃ』
『そうそう。主任、キレイだから、あまり親身に世話してると、彼も、その気になっちゃうかも』
当の佐知子に対して、そんな軽口が出るような。気安い話題だったのだ。
佐知子が、急に入念なメイクで出勤するようになったというニュースに食いついて
『やっぱり!』
『うーん、越野主任も、女だったかあ』
と、大袈裟にハシャいでみせたのも、もうしばらく、この無責任な
(根も葉もない、と誰もが承知している)噂話を楽しもうという気持ちでしかなかった。
まだ、この時点では、彼女たちの、佐知子への信頼は揺るぎがなかったのだ。
しかし。
その後の、佐知子の変貌ぶりは、あまりにも急激で。
『……主任……なんか、本当に感じが変わった?』
そんな言葉は、ひっそりと、憚るように囁かれるようになって。
さらには。
『気づいた? いま、主任が履いてたストッキング、朝履いてたのと違ってたの』
『……髪が乱れるようなことって、なによ? 患者とふたりきりの病室で』
交わされる会話は、どんどん密やかに、しかし熱っぽくなり。
不穏な空気が醸造される中、皆が監視するような眼を佐知子に向けはじめて。
当の佐知子は、周囲の雰囲気にも、向けられる注視にも気づかぬようにあまりにも無防備に、徴候を晒し続けて。
『……私、昨日、検査室に用があって。特別病室の前を通ったんだけど……その時に……』
ついには、そんな情報までが、口伝えされて。
もはや、佐知子の病室内での振る舞いは、まだ目撃はされていない、というだけのことで。
この期におよんでは、どれほど越野主任に心酔する者でも、認めざるをえなかった。
閉ざされた、あの部屋の中で。
絶対にありえないと思っていた事態が、現実に進行中なのだということ。
……重苦しい沈黙がとざす。
対峙するふたりの間を交互していた周囲の視線は、佐知子へと収束して。
皆が、息をつめて、佐知子の反応を待った。
祈るような眼を向ける者も、多かった。
佐知子が、有効な釈明を、すべてが馬鹿げた誤解であったと皆を納得させるような
言葉を聞かせてくれないだろうかと希望して。
それは、はかない望みだ。いまさら、どんな弁明を聞かされても、簡単に納得できるはずもない。
それでも、佐知子自身の口から、なにがしかの言葉が聞きたいと。
しかし。
「………………」 能面のように表情を消した佐知子は、しばしの無言のあとに、
「……なにを」 と、切り出した声が、ひどく掠れて。咳払いをついて、
「……なにを言いたいのか、よくわからないわ」
素気なく、突き放すような口調で言い直した。それで、話は終わりだというふうに。
一斉に、失望の吐息が洩れる。
佐知子は、そんな部下たちの反応も無視して
「それでは。今日も、よろしくお願いします」
お決まりの号令に声を張って、強引に会合を終わらせてしまう。
お願いします、と、バラバラに復唱したのは、ほんの二、三人だったが。
佐知子は、それにも気をとめることなく、サッと踵をかえした。
足早に部屋を出ていこうとする背姿に、注視が集まる。特に、豊かな尻へと。
「……あんなにクッキリ透けてるのに、わからないんだって」
沢木看護婦が、誰に言うともなく。無論、逃げていく佐知子に聞かせる意図だから、早口に大声で。応えた別のナースも、同様にして、
「にしても、黒のTバックって、どうなの?」
「だよねえ? 透ける透けない以前に、年甲斐もないっつーか」
「必死なんでしょ」 さらに、ひとりが加わる。
「若い恋人、逃がさないようにさ」
「若すぎでしょうが。中学生だよ? 息子と同い年だって、いってたじゃん」
「ホント。まっさか、ショタ趣味とはねえ」
……すでに、佐知子は立ち去っているが。
憤懣を吐き出す、若いナースたちの会話は、なおも辛辣さを増しながら続く。
それを止めようとする者も、もういなかった。
-18-
「そりゃあ、バレるよね」 達也が笑う。
「ただでさえ、デカくて、目を引くのにさ。その上、下着の線が見えなくて、かたちが、そのまま浮き上がってれば、そりゃあ注目されるよ」
「……ああ、ひどいわ」
「それに、黒だから、ホントに透けちゃうんだな。フフ、すっごくいやらしいよ」
その、いやらしい眺めは、達也の眼前に開陳されている。白衣越しに下着が透けるさま、ではなくて。黒のTバックのショーツが、白い大きな臀に食いこんでいるようすが、そのまま晒されているのだ。
達也の横たわるベッドのそばに、達也に背を向けて立った佐知子の白衣の裾は捲くり上げられていて、大胆な下着を纏ったヒップが、完全に剥き出しになっていた。
Tバックのショーツは、まったく臀肉を覆い隠す役目は果たしていない。
細い布地は、分厚い肉の深い切れ目に食いこんで、キュッと寄りあった双臀の肉を左右に別っている。白い肌に映える煽情的な黒い色といい、豊満な熟れ臀のボリュームを強調して、官能美を際立たせる、淫猥なアクセントに過ぎなかった。
「……恥ずかしいのよ…?……こんな・・・」
こんな年甲斐もない、と、部下たちに揶揄された通りの自覚はあるから、佐知子は羞恥に震える声で訴える。
「恥ずかしいけど……達也くんが、着けろっていうから…」
朱をのぼらせた細首をねじって、達也の顔を見つめる。媚びを滲ませた眼で。
佐知子が言うとおり、無論、すべては達也が指示したことである。
ナースの勤務には、あまりにも不適当な、淫らがましい下着を身に着けているのも。
手間を省くために、パンストではなく腿で止めるタイプのストッキングを履いているのも。
「よく似合ってるよ。すっごく、そそられる」
円く張り出した臀丘を撫でながら、達也は言って、
「佐知子さんは、イヤなの? 無理して、僕に合わせてるってこと?」
「そうじゃ…ないけど……」 佐知子の返答は、気弱く尻すぼみになった。
すべて、達也の望んだことだが。強制ではない。
乞われるがままに、佐知子が受け容れてきたということである。
Tバックを履いてる姿が見たい、と強請られれば、その日の帰宅途中にデパートに立ち寄って。顔から火の出るような思いをしながらも、達也の希望通りの、色とデザインの品を買い求めて。
翌日から、それを着けて出勤した。もちろん、はじめて身につける極小の下着、まるで裸の尻タブのうそ寒さに、不安と羞恥を感じながら。
登院して、白衣に着替えれば、突き刺さる周囲の視線に、まさに針のむしろのような居たたまれなさを味わい、懸命に素知らぬふりを装って。
それでも、その恥ずかしい格好を見た達也が、手放しの喜びようを示せば、報われた気分になってしまう。
若いナースたちの嘲笑の言葉は、まったく正しく、佐知子は必死だった。
達也の心を繋ぎとめることだけを、行動原理として。そのために、達也の望むことはなんでも受け入れる気持ちになっている。
達也との関係が齎す、肉と魂の愉悦を貪ることだけが、すべてになって。
それ以外のことは、ボンヤリとぼやけて、遠くなってしまっている。
だから、
「……他のナースたちに…みんなに知られてしまって……私、どうしたらいいの…?」
甘く恨む眼を達也に向けて、口から吐いた嘆きの言葉は、現実の状況に比べればあまりにも危機感が薄かった。とうとう、部下から面と向かって問いつめられたという窮状を達也に知らせたのも、“だから、人目につくことは、謹んでくれ”などというつもりではなくて。

Last Update : 2008年12月04日 (木) 7:45